『 桜の下 』


桜の下には死体が埋まっている

結核に冒された少女は 桜の木が好きだった
療養所の庭に植えられた木の幹に いつも座り込んでいた
迎えに来るものもおらず 帰る家もない
仲間のいない桜の老木は 彼女の唯一の友だったのだ
雨の日も風の日も 彼女が桜に語りかけない日はなかった
病が悪化しても 毎日通いつめた
花の咲かなくなった桜の木に 自分の姿を見て

秋の嵐の夜 木に落雷
何故か外に居た彼女も 即死だった
彼女は木の根元に埋葬され
何もなかったかの様に 月日が流れ始めた



桜の下には死体が埋まっている
古からの言い伝え
桜の花が あんなに魅力的で その上哀愁を漂わせているのは
死者が仲間を呼んでいるから
桜の花びらがあんなに淡い桃色なのは
死者の血を吸い 生き長らえているから



桜の下には死体が埋まっている
大好きだった木の下に埋葬された彼女は 幸せだっただろう
幾人もの死者と共に 眠っているに違いない



桜の下には 死体が埋まっている
次に埋められるのは 私かもしれない



桜の下には…




モドル   ススム